渥美一丁漬

『渥美沢庵』は伝統的なたくあんの1つです。

最初に:『渥美』は『渥美半島』

愛知県の最南端に位置する半島が『渥美半島』です。
現在は『田原市』となっていますが、2005年10月の合併までは『渥美町』でした。
『渥美町』は1955年4月に、「福江町」と「伊良湖岬村」と「泉村」の1町2村が合併して誕生しました。

自然に恵まれた気候

渥美半島は年間を通じて暖かい気候です。

  • 年間平均気温は17℃前後です。

周辺地域と比べると雨の量が少なく、特に冬は降雪もなく生活しやすい環境です。

  • 年間平均降水量は1,600mm前後。
  • 年間降雪日数は10日以内。

平均的な地域より風が強いため、風力発電に適した地域です。

  • 平均風速は3mを超えることが多い。
  • 冬には「からっ風」と呼ばれる強い北風が吹く。

農業・漁業が主な産業

1968年に農業用用水の『豊川用水』が完成し、当時の渥美町は大規模な土壌改善を行いました。 これにより、渥美半島は日本を代表する大農業地域に成長しました。 主な農産物は、キャベツ・白菜・ブロッコリー、他にも電照菊・バラ・カーネーションの栽培が有名です。

田原市の市町村別農業産出額は、全国一位です。

渥美半島は、北は三河湾・南は太平洋に囲まれており、ノリの養殖やアサリが有名です。


本題:『渥美沢庵』は伝統的なたくあん

『渥美沢庵』(あつみたくあん)の歴史

昭和初期

昭和7年から昭和8年に、渥美半島でたくあん用の大根の栽培が始まりました。 当時のたくあん用の大根は、『宮重大根』という青首大根を細くした形状の大根でした。 冬場の北風が大根の乾燥に最適だったので、大根を天日干しにしてたくあんなどの漬物用原料にして、名古屋方面の漬物業者に出荷していました。

昭和14年になると、第二次世界大戦が始まりました。 第二次世界大戦による食糧難の影響で、たくあん用の大根の栽培は中止され、夏はサツマイモ・冬は麦を栽培しなければなりませんでした。

昭和中期

終戦して5年が経過した昭和25年になると、食糧事情が好転しました。 サツマイモや麦の栽培から、キャベツやたくあん用の大根を栽培する元の状態に戻りました。

昭和27年から昭和31年にかけて、日本は台風の影響を受けました。 特に、たくあんの一大産地の伊勢に直撃した伊勢湾台風によって、伝統的な『伊勢たくあん』の生産が大きく減少しました。

『伊勢たくあん』の減少に伴って、戦後から少しずつ生産量が増えている『渥美沢庵』の生産が本格化しはじめました。 当時のあつみたくあんは、「ふすま漬たくあん」「昆布茶漬たくあん」「うめずたくあん」、**「一丁漬たくあん」**など多くの種類があり、渥美沢庵は全国的に有名なたくあんブランドの1つになりました。

特に、最高級の「一丁漬たくあん」は人気が高く、高級料亭や寿司屋で多く使われていました。

最盛期には、渥美半島一帯で4斗樽(70kg樽)で計算すると年間60万樽の出荷がされていました。 (現在の日本人の消費に合わせると、約7,500万人分のたくあんを供給していたことになります。)

昭和40年代に入ると、たくあんの袋詰め商品の開発が始まりました。 現在スーパーマーケットやECサイトで見るたくあんは、当時の袋詰め商品が改善されたものです。

昭和後期

昭和50年代に入ると、『渥美沢庵』は衰退期を迎えます。 衰退期を迎えた原因は、渥美半島でキャベツなどの他の作物の栽培が始まったからです。 たくあん用の大根を仕入れることができなくなり、多くのたくあんメーカーが廃業しました。 最盛期は40社以上あったたくあんメーカーは、この頃に10社程度まで減少しました。

現在

平成に入ってからは、たくあんの主な生産地は九州の南部になりました。

渥美半島のたくあんメーカーは、幻とも言われる伝統の『渥美沢庵』を生産し続けています。

『渥美沢庵』(渥美たくあん)の生産方法

大根の品種

伝統的な渥美沢庵は、『阿波晩成』という大根を使用していました。 阿波晩成の特性は、大根全体が柔らかく歯切れが良いことです。

その他にも、『干し理想』や『漬誉』という品種も使われていました。

大根の栽培

伝統的な渥美半島での大根の栽培は、播種を9月5日〜15日に行うのが最適と言われる。

肥培管理は、間引き2回、中耕、くりわり、追肥2回です。

大根は11月に収穫されます。

天日干

収穫した大根を水洗いして、6本束にします。

束ねた大根は、海岸沿いの稲架(はざ)に架けて天日干しします。 (海岸沿いは、冬の期間でも霜が降らないため、たくあん用の大根の乾燥に適しています。)

2週間ほど天日干しすることで、大根の歩留まりは25%程度になります。 (収穫時は1kgあった大根が、250gになります。)

漬込み

干した大根の葉を切り落とします。

たくあんにするために、干し大根をぬか床に漬け込みます。 ぬか床は、米ぬかと塩を基本に、「柿の皮」、「茄子の葉」、「昆布」、「唐辛子」などを調合します。

干し大根をぬか床に漬け込んで、その上に重石を乗せて約1年間の時間をかけて発酵させます。 漬け込む際に使用する蔵は、光が入らず、温度変化が少ない環境にします。

商品化

1年間熟成させたたくあんを取り出します。

塩度を調整し、味を調えて、樽詰めもしくは袋詰めして出荷します。


豆知識:『渥美沢庵』は現代のたくあんの基礎

現在、スーパーマーケットやECサイトで流通しているたくあんは、渥美沢庵を基礎にしています。

調味・味付けの先駆けの渥美沢庵(あつみたくあん)

渥美沢庵が他のたくあんと大きく違った点は、 「昆布」や「うめず」で調味をしたという点です。

現在では調味したたくあんが基本とされていますが、渥美沢庵が誕生する前までは、調味したたくあんというものは存在していませんでした。

たくあんを初めて袋包装した渥美沢庵(あつみたくあん)

他にも、今では袋包装されたたくあんは当たり前ですが、これも渥美沢庵の保存性を高めるために導入された包装方法でした。

袋包装が主流になるまでは、樽詰めされたたくあんが市場に送られていました。


まとめ:伝統を重んじ消費者目線に立つ

渥美沢庵は、地形を生かして、伝統的かつ本質的なたくあんの製法を取り入れ、さらに消費者の需要を満たすために新たな取り組みをした沢庵です。

渥美沢庵(あつみたくあん)は恵まれた土地と風のおかげ

渥美半島は、野菜栽培に適した土壌で、全国有数の野菜の産地です。

加えて、冬場は「からっ風」と呼ばれる天日干しに最適な風が吹きます。

そんな恵まれた環境で作られた渥美沢庵は、他の産地にはない「おいしさ」があります。

干した大根をぬか床で漬け込んだ渥美沢庵(あつみたくあん)

伝統的なたくあんの製法は、天日干しにして乾燥させた大根をぬか床で半年以上かけて発酵させます。

天日干しによって、大根の本来の旨味が凝縮されます。

ぬかを使って大根を熟成発酵させることで、ビタミンが増加し栄養価が高くなります。

渥美沢庵は、伝統的かつ本質的な製法を取り入れたたくあんです。

消費者目線に立って新たな常識を作った渥美沢庵(あつみたくあん)

おいしいたくあんを作るために、調味・味付けをしたのが渥美沢庵です。

スーパーマーケットの普及に伴い、適した包装に対応したたくあんです。

渥美一丁漬

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