養老沢庵は風味豊かなたくあんです。
最初に:『岐阜県養老郡』発祥のたくあん
岐阜県の南西部に位置するのが、養老郡です。
当時の天皇が、現在の養老郡にあった滝を、若返りの滝として「養老の滝」と名付け、西暦714年から724年までの元号としたことから、この町名になったとされています。
干しに最適な養老山脈の風
岐阜県養老郡には養老山脈があります。
この養老山脈にある養老山は、標高859メートルの山です。
冬は伊吹山系から冷たく強い伊吹おろしが吹く地域です。
この冷たい風は、たくあん用に使用する干し大根を干すのに最適な風です。
大根の産地でもある養老郡
養老郡では、大規模ではないですが大根の栽培がされています。
名水百選に選ばれている養老の滝の、おいしくきれいな水を使い農業を営んでいます。
本題:『養老沢庵』は風味豊かなたくあん
養老沢庵は、「岐阜県養老郡」発祥のたくあんです。
養老沢庵は干し大根をぬか漬けにした、日本の伝統的な食品であるたくあんの一種です。
養老沢庵の生産方法
養老沢庵は、干し大根を使用します。
干す大根は白首大根で、2週間ほど天日干しをして風に当てて乾燥させ、大根の水分を抜きます。
水分が抜けた大根は、ぬか床に漬けて、長期間かけて発酵させます。
養老沢庵が「養老沢庵」とわざわざ呼ばれるのには、理由があります。
産地が養老郡であることだけではありません。
その理由は、特徴的なぬか床を使用しているところにあり、他のたくあんとは違うことによって、特徴をつけて名付けられています。
特徴的なぬか床で発酵
養老沢庵は、特徴的なぬか床に漬けます。
通常のぬか床は、塩と米ぬかで構成されます。
そこに、柿の皮や茄子の葉、唐辛子を多く混ぜ入れるのが養老漬けのぬか床です。
柿の皮や茄子の葉、唐辛子を入れることで他のたくあんにはない、養老沢庵の独特な風味になります。
柿の皮の効果
柿の皮は、ぬか床と相性が良く、甘みを出して風味を良くする効果があります。
茄子の葉の効果
茄子の葉も、ぬか床と相性が良いです。
たくあんの風味を強くし、食欲がそそられます。
唐辛子の効果
唐辛子は、ぬか漬けに辛味を足して味を引き締める効果があります。
また、唐辛子に含まれるカプサイシンによって防虫効果もあります。
伊勢沢庵に似ているたくあん
養老沢庵は、伊勢沢庵(いせたくあん)に似た歯触りがあります。
知名度は伊勢沢庵の方が全国的に養老沢庵より有名です。
伊勢沢庵とは
伊勢沢庵は、三重県の伊勢地方で作られるたくあんです。
伊勢地方は、沖積土が大根栽培に適していて、大根を干すのに最適な風が吹いています。
昭和45年頃には最盛期を迎え、全国有数のたくあん生産地でした。
昭和55年頃には、連作障害などの影響により、たくあんの生産地として影を潜めることになりましたが、現在でも有名なたくあんブランドの1つです。
大根産地として適していた伊勢沢庵
一説では、養老沢庵を元に、伊勢沢庵が作られたと言われています。
なぜ養老沢庵が元なのに、伊勢沢庵の方が知名度があるのか。
その理由は、大根産地として、養老地方より伊勢地方の方が優れていたからです。
また、伊勢地方は江戸時代からたくあん作りが行われていました。
たくあん作りの下地があった上で、養老沢庵の製法を取り入れたため、生産量・知名度ともに養老沢庵を上回ったのが、伊勢沢庵です。
伊勢沢庵との違い
養老沢庵と伊勢沢庵の大きな違いは、風味にあります。
養老沢庵は伊勢沢庵より風味が強く、独特の味わいがあります。
ぬか床に加えた柿の皮や茄子の葉、唐辛子などの影響によって、養老沢庵ならではの独特の味わいが生まれるのです。
最後に:現代において貴重な『養老沢庵』
養老沢庵は、伝統的な製法で作られるたくあんですが、大根の生産者の減少と、大根をたくあんに加工する人の減少によって、現在では限られた地域でしか手に入れることができません。
塩と米ぬかに、柿の皮や茄子の葉や唐辛子などを加えたぬか床により、他のたくあんにはないような特徴的な強い風味が生まれています。
養老沢庵は、干し大根を使ったたくあんです。干し大根ならではの歯応えがあり、噛めば噛むほど深い味わいを感じることができるたくあんです。ごはんと一緒に食べることで、ごはんの甘みも出てきてとても良い組み合わせで食べることができます。
岐阜県養老郡の豊かな自然と、伝統のもとに紡がれているたくあんが養老沢庵です。