たくあんと添加物

最初に:加工食品には添加物が当たり前

「添加物は健康に悪い」というイメージを持たれる方が少なくありません。
一方で、スーパーマーケットなどに行くと、添加物を多く含む食品が売られています。
たくあんをはじめとする漬物も、加工食品に含まれます。

加工食品を製造・販売する会社は、なぜ添加物を含んだ食品を製造・販売するのでしょうか。
まずは「加工食品」と「添加物」とは何かを考えてみましょう。

加工食品とは?

加工食品とは、食品になんらかの加工を施したものであり、その種類は、水産練り製品・肉加工品・乳加工品・嗜好食品・調味料・菓子類・冷凍食品・レトルト食品・缶詰食品・インスタント食品等、多岐にわたります。

厚生労働省

多くのものが加工食品に該当しています。では、加工食品以外の食品は何があるのでしょうか。

食品表示法によれば、「食品」は、「加工食品」「生鮮食品」「添加物」に分けられます。

つまり、生鮮食品である「青果・鮮魚・精肉」、添加物以外は加工食品ということです。

添加物とは?

食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物

消費者庁

加工食品が製造される過程で使用されるものは、基本的には「添加物」と定義されます。

つまり、加工食品には添加物が使用されるのは当たり前なのです。
問題は、適切な目的に応じた添加物を使用した上で、体に悪くない添加物が使われているかどうかです。

私たちが作っている「たくあん」にも、添加物が使用されることがあります。
添加物の良い点と悪い点を踏まえた上で、目的に応じた添加物を使用しています。

この記事では、「なぜたくあんに添加物が使われるのか?」「添加物はなぜ体に悪いのか?」「どの添加物は注意が必要か?」についてお伝えしていきます。

本題:たくあんと添加物

スーパーマーケットなどに売られている「たくあん」には、添加物が使用されることが少なくありません。

なぜでしょうか。

なぜたくあんに添加物が使われるのか?

結論としては、無添加より添加物を使った方が、メリットが大きいからです。

では、メリットとは何でしょうか。
「おいしさ」「安全」「価格」の面で考えてみます。

おいしさ面での添加物のメリット

添加物を使うと、多くの人が好む味付けを同じ品質で実現することができます。

多くの人が好む味付け

例えば、
カップヌードルは、全世界で1年間に約1,000億食が消費されます。
そのカップヌードルにはこれだけの原材料があります。

油揚げめん(小麦粉(国内製造)、植物油脂、食塩、チキンエキス、ポークエキス、しょうゆ、ポーク調味料、たん白加水分解物、香辛料)、かやく(味付豚ミンチ、味付卵、味付えび、味付豚肉、ねぎ)、スープ(糖類、粉末しょうゆ、食塩、香辛料、たん白加水分解物、香味調味料、ポーク調味料、メンマパウダー)/加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、炭酸Ca、カラメル色素、かんすい、増粘多糖類、カロチノイド色素、乳化剤、酸化防止剤(ビタミンE)、香辛料抽出物、くん液、香料、ビタミンB2、ビタミンB1、酸味料、(一部にえび・小麦・卵・乳成分・ごま・大豆・鶏肉・豚肉を含む)

日清食品ホームページよりhttps://www.nissin.com/jp/products/items/9735

当然ですが、添加物が多ければ多いほどおいしいわけではありません。
添加物の使う目的と使う量を適切に調整することで、多くの人が好むおいしさを実現することができます。

一方で、添加物を使わないおいしさもあります。
素材本来の味を好まれる方は、添加物を使わないおいしさを求められると思います。

同じおいしさの品質を実現する

添加物を使うことで、おいしさの品質を一定に保つことができます。

なぜかというと、一つ素材の味に頼らなくなるからです。

たくあんで考えてみます。

たくあんのおいしさの品質

たくあんは、大根からできていますが、大根には品種があります。
甘い大根の品種や辛みが少ない大根の品種、食感にもバラツキがあります。

大根は冬場が旬の野菜なので、旬の時期に収穫した大根と、旬ではない時期に収穫した大根でも味が違います。

他にも、日照時間や土の栄養など様々な要因によって、たくあんの素材である大根の味は異なってきます。

おいしさは一定の方が良い

一方で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで売っている商品に味のばらつきは、ない方が好ましいと言われています。
もし、先週買ったたくあんがおいしくて、今日同じたくあんを買って味が違っておいしくなかったら残念に思う人が多いと思います。

大根の素材の味に依存するほど、このような可能性が出てきます。

そこで、一定のおいしさを再現するために、調味料などの添加物を使用して、多くのお客様に何度でも同じ味を体験していただくために添加物を使用することが多いです。

安全面での添加物のメリット

添加物は、正しく適切に使えば、食品を安全にすることができます。

摂取量に注意が必要な添加物もありますが、食品の味を長期間保つことができる添加物もあります。

摂取量に注意が必要な添加物

たくあんには、使用制限のある添加物が使われることがあります。

保存料・着色料・甘味料は、大量摂取には注意が必要です。

保存料
添加物の名前表示役割使用制限
ソルビン酸カリウム保存料(ソルビン酸K)カビ・酵母・好気性菌の抑制に効果あり。たくあん漬の場合…1.0g/kg以下

たくあんなどの漬物(浅漬けは除く)をはじめ、世界的にもっとも使われる保存料は、ソルビン酸カリウムです。

ソルビン酸カリウムを使うことで、カビ・酵母・好気性菌を抑制し、食品を衛生的に保つことができます。
特に酸性側(pHが小さい時)にカビなどを抑制します。

例えば、ウィンナーソーセージにおいては、ソルビン酸カリウムを使用することで使わない時と比べて保存時間が約5倍になった研究もあります。

つまり、ソルビン酸カリウムを使用することで、以下のメリットがあります。

  1. 食品が廃棄されにくくなる。
  2. 遠くの人に食品を届けられるようになる。
  3. 食品のおいしい状態を維持できる。

一方で、ソルビン酸カリウムの危険性を懸念する声があります。
ある実験で、ソルビン酸カリウムと性質や毒性がほぼ同じソルビン酸を落花生油あるいは水に溶かして、ラットに皮下投下したところ、がんが発生したと言われています。
漬物に使われるような経口摂取の場合においては、同様の現象は発生していません。

着色料
添加物の名前表示役割
クチナシ色素着色料(クチナシ)(天然着色料)食品を黄色に着色する。
ウコン色素着色料(ウコン)(天然着色料)同上。
食用黄色4号着色料(黄4)(合成着色料)同上。
食用黄色5号着色料(黄5)(合成着色料)同上。

たくあんは、大根が発酵する過程で、黄色に変色します。
しかし変色具合は、大根に含まれる辛味成分の量や、発酵した期間によって均一にはなりません。

量販店などで、同じ商品名で売られている商品が、黄色と白色で売られている状態を見たら、違和感を感じると思います。

また、発酵の過程の中途半端な黄色は、購買意識を誘うために最適ではありません。
そのため、商品の見た目を均一にし、購買意識を誘うために着色料を使用します。

天然着色料(クチナシ色素・ウコン色素など)は、天然の植物から抽出したものです。
抽出後は、化学的な処理がほとんど加えられていないものを、食品に添加しているので、安全性は高いと言えます。

合成着色料(食用黄色4号・食用黄色5号)は、食用タール色素として国から認可された着色料です。
1日の摂取許容量が定められており、大量摂取には注意が必要な添加物です。

甘味料
添加物の名前表示役割使用制限
サッカリンNa甘味料(サッカリンNa)砂糖の約500倍の甘さを添加する。たくあん漬の場合…2.0g/kg
アセスルファムK甘味料(アセスルファムK)砂糖の約200倍の甘さを添加する。漬物の場合…1.0g/kg
スクラロース甘味料(スクラロース)砂糖の約600倍の甘さを添加する。漬物の場合…0.58g/kg
アスパルテーム甘味料(アスパルテーム)砂糖の約200倍の甘さを添加する。
ステビア甘味料(ステビア)砂糖の約300倍の甘さを添加する。

たくあんは、塩分を多く含んでいます。
そのため、甘味料を入れて塩辛さを感じにくくして、食べやすくすることが多いです。

それぞれの甘味料で、原料が異なるため、それぞれに特徴的な甘さがあります。

甘味料は複数種類を添加することで、それぞれの長所と短所を組み合わせています。
(例えば、アセスルファムKは後味が悪いと感じる人が多いので、ステビアなどと一緒に添加されます。)

一方で、人工甘味料は有害性があるという研究もあります。
サッカリンNaには発がん性が懸念され、アセスルファムKは皮膚の炎症が懸念され、アスパルテームはアレルギー性気道炎症の懸念があります。

上記の中で、ステビアは天然由来の甘味料です。
ステビアという植物があり、甘味成分を含んでいるため、ステビアから抽出した物を甘味料として使われています。

スクラロースは、人工甘味料ですが世界的に安全が確認されています。

これらの甘味料が使われるのは、2つの理由があります。

1つは、低カロリーで甘さを表現できる点です。
糖尿病などで糖分の摂取を避ける人や、ダイエットなどで糖質制限されている方にとっては、ゼロカロリーもしくは低カロリーで甘さが表現できる甘味料は魅力的です。

1つは、砂糖を使用するよりも安く味を調整できる点です。
上記のように、甘味料は砂糖の数百倍の甘さを添加できます。その分必要量が少ないので、費用が少なくて済むということになります。

価格面でのメリット

添加物を使うことで、価格面のメリットを享受できます。

保存料による価格面のメリット

保存料を使うことで、廃棄リスクが減ります。
スーパーマーケットなど量販店であれば、棚に陳列できる期間が長くなり、商品が売れなくても良い期間が長くなります。
逆に、売れなくても良い期間が短く、賞味期限が近づいた商品は値下げシールを貼ったり、廃棄するので利益が出にくくなります。

購入したお客さんにとっても同様のことが言えます。
食品を買う前に、手にした商品の賞味期限を確認したことが一度はありませんか。
賞味期限が長ければ、毎日少しずつ食べる食べものでも、長い期間捨てなくてもいいからです。

つまり、保存料を使うことで、製造者・販売者・購入者の全員にとって廃棄面においては利益があるということです。

甘味料による価格面のメリット

甘味料を使うことで、低価格で甘味を表現することができます。

甘味のあるたくあんは、添加物によって作られています。
甘味にも種類があり、砂糖では再現できない甘さを人工甘味料では再現できます。
加えて、砂糖の数百倍ある甘さを持っている甘味料は、その分低い費用で表現することができます。

調味料による価格面のメリット

旨味成分であるアミノ酸などは調味料として添加されています。

アミノ酸などは、品質を均一にすることが難しいため、たくあんの原料である大根の味以外の割合を高めることで、品質を一定にしやすくして、低い費用で再現できています。

無添加のメリット

ここまでは、添加することによる良い点と悪い点でした。

では、無添加にはどのような良い点と悪い点があるのでしょうか。

無添加は健康に無害

最初に挙げられる点は、健康面です。

添加物が増えれば増えるほど、体に悪影響を及ぼす可能性が増えます。
一方で、何も添加していなければ、悪影響を及ぼす可能性は増えません。

しかし、人間は調理されたものを食べることの方が多いです。
添加物が少なければ少ないほど、調理の手間が増える場合が多いと考えられます。

素材の味を楽しめる

無添加であれば、たくあんをはじめとする漬物は、素材の本来の味に近づきます。

旨味成分であるアミノ酸や、甘味料などが含まれていない、ぬか漬けとしてのたくあんは、大根の旨味などが凝縮された至極の一品です。
噛めば噛むほど凝縮された味を感じることができ、ご飯との相性が良いのはもちろんのこと、お酒のつまみとして単体で食べても食べ応えがあります。

たくあんは、ラーメンや焼肉のように子どもから大人まで万人向けの味というよりは、コーヒーのように好きな人が好む味と言われています。
なので、素材の味を生かしたたくあんもあれば、添加物で調理されたたくあんもあっていいと個人的には思います。

最後に:たくあんは伝統と先進の融合

たくあんは、伝統的な食品であり、素材を生かすことがおいしいたくあんに求められる1つの要素です。

一方で大きな時代のニーズは、味などの品質が一定であることや、賞味期限が長いことに向いています。

伝統的な製法で、大根の持つ旨味を生かしながら、適切に調味料を使うことが求められると思います。
さらに、伝統的な製法のみで作られるたくあんも求められ、先進的に突き詰めたたくあんも求められると思います。

つまり、購入してくれるお客さんに寄り添って、一つ一つにこだわってお届けする姿勢、そのための知識や体制であることが重要です。