発酵とは

発酵とは、『微生物の働きによって食べ物が人間にとって有益になること』です。

最初に:あなたの周りは発酵だらけ

『発酵』と聞いて、どのようなイメージを持たれますか?

発酵は健康に良いとは聞いたことあるが、具体的に何が良いのかわからない

発酵食品や発酵飲料など、テレビコマーシャルで放送しているのを見たことはありませんか?

体に良さそうなイメージではあるが、具体的に何が良いのかわからないという声を耳にします。

この記事を読んで、「なぜ発酵が体に良いのか?」、「発酵とは何か?」を学んでいただけると幸いです。

1日1回以上は口にしている発酵食品

発酵は微生物の働きによって行われています。

ご存知の通り、私たちの身の回りには微生物がたくさん存在しています。 つまり微生物と共存しているのが私たちなのです。

微生物と共存しているということは、発酵と共存しているといっても過言ではありません。

私たちの日常において、発酵食品・発酵飲料は生活必需品なのです。

発祥 食べ物飲料調味料
日本漬物(ぬか漬け、粕漬け、麹漬けなど)
納豆
かつお節
塩辛
日本酒
焼酎
カルピス
梅酒
味噌
醤油

本みりん
海外漬物(キムチ、ザワークラウト、ピクルスなど)
パン
メンマ
チョコレート
チーズ
ヨーグルト
ビール
ワイン
ウーロン茶
ナンプラー
ヌクマム
身の回りの発酵食品

本題:発酵は、微生物によって食べ物が人間にとって有益になること

発酵は、微生物の働きによる効果です。

発酵の種類生み出す成分身近なもの
乳酸発酵乳酸漬物の一部
ヨーグルト
アルコール発酵アルコール酒類
酢酸発酵酢酸食酢
主な発酵の種類

発酵することで、食べ物がおいしく健康になる。

まずは、「なぜ体に発酵が良いのか?」についてです。

発酵することで、食べ物がおいしくなる

発酵するということは、どういうことでしょうか。

発酵すると、微生物が食材に含まれるタンパク質や糖質を分解し、うまみの素となるアミノ酸やアルコール、乳酸や酢酸などを生み出します。
(発酵の種類によって生み出される成分が変わってきます。)

例えば、たくあんで考えてみましょう。

たくあんは乳酸発酵によって作られる

たくあんは、大根が乳酸菌によって発酵した発酵食品です。

つまり、たくあんは乳酸発酵食品です。

たくあんの発酵

たくあんは、塩と米ぬかを主な成分としたぬか床に、大根を漬けて作られます。

大根についていた植物性乳酸菌は、米ぬかや大根の糖を食べて増えていきます。
この時に、植物性乳酸菌が出す酵素によって大根は発酵します。

乳酸発酵した大根は、微生物によってうまみ成分乳酸を多く含みます。
さらに、塩のミネラル米ぬかのビタミンB1などぬか床の栄養素を吸収します。

これがたくあんの発酵です。
たくあんは発酵することによって、大根の味からたくあんの味になり、栄養素を増加させます。

余談:大根は白いのに、たくあんは黄色い

余談ですが、たくあんと聞くと黄色い漬物のイメージをされる方が多いと思います。
大根は白色の野菜ですが、たくあんが黄色になるには理由があります。

たくあんが黄色になるのは、大根に含まれる辛味成分が米ぬかに含まれる枯草菌によって分解されて、他の成分と結合するためです。
(クチナシなどの天然着色料や、合成着色料を使用している場合もあります。)

発酵することで、食べ物が健康的になる

発酵を支えているのは、細菌などの微生物です。

微生物は、名前の通り生きています。

細菌の一種である乳酸菌は、生きているため、食べて体の中に入ってからも活動をします。

発酵食品は、腸内環境を整える

乳酸発酵した食品には、ヨーグルトや漬物があります。
これらの食品には、乳酸菌が多く含まれます。

乳酸菌は、善玉菌の1つです。
乳酸菌は、乳酸を作り出して悪玉菌の増殖を抑制します。

悪玉菌は、腸内のタンパク質を腐敗させ、体に悪影響を及ぼす物質をつくります。
さらに、老化の原因になったり発がん性物質と関係があると言われています。

乳酸菌が生み出す乳酸は、腸のぜん動運動を促して、便秘改善に効果があります。

発酵食品は、体内の酸化を防ぐ

発酵食品は、体の老化を防ぐ効果もあります。

発酵食品には、ビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化物質が多く含まれています。

この抗酸化物質は、活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除く物質です。
活性酸素は、老化・がん・免疫機能の低下などを引き起こします。

つまり、発酵食品を食べることで、老化やがんなどを予防できるのです。

発酵させる微生物は、大きく分けて3種類

ここからは、「発酵とは何か?」です。

発酵とは、微生物の働きによって食べ物が人間にとって有益になることです。
この発酵を促す微生物は、大きく分けて「カビ」「酵母」「細菌」の3種類あります。

カビについて

まず、カビによる具体的な発酵食品について紹介します。

それは、味噌・醤油・かつお節・チーズです。
味噌や醤油は、麹カビと呼ばれるカビによって発酵して生み出されます。
かつお節はカツオブシカビから、チーズの中のブルーチーズはアオカビによって生み出されます。

カビは、胞子を飛ばして拡散し、菌糸と呼ばれる糸状の細胞を伸ばして広がっていきます。
広がった結果、肉眼でも確認できるような形のカビになります。

カビが、でんぷんを糖に分解したり、タンパク質をアミノ酸に分解して、素材を発酵させます。

酵母について

次に、酵母についてです。

酵母による発酵は、ビールやワインなどのアルコール・パンが代表的です。
ビールはビール酵母から、ワインはワイン酵母によって発酵して生み出されます。

酵母は出芽によって増殖します。

酵母は、ブドウ糖をアルコールと二酸化炭素に分解して、素材を発酵させます。
発生した二酸化炭素が、ビールの泡であったり、パンを膨らませてふっくらとさせています。

細菌について

最後に、細菌についてです。

細菌と聞くと、悪いイメージを思い浮かべるかもしれませんが、安心してください。
健康的な発酵に欠かせない存在の1つです。

細菌によって、漬物・ヨーグルト・納豆などが存在しています。
漬物やヨーグルトは乳酸菌から、納豆は納豆菌によって発酵して生み出されています。

細菌は、カビや酵母より小さい微生物です。
細胞分裂を繰り返して増えます。

細菌の1つである乳酸菌はブドウ糖を分解して乳酸を作り出します。

最後に:欧米とは全く違う、日本の発酵文化

日本の発酵文化は、欧米とは大きく異なります。
言葉の語源から紐解いてみます。

発酵は英語で「Fermentation」

発酵を英語に直訳すると、『Fermentation』です。

Fermentationの語源は、ラテン語の『Fervere』です。
Fervereは、日本語にすると『沸騰する』という意味になります。
これは、アルコール発酵するときに二酸化炭素が泡になって浮いてきた現象から名付けられています。

つまり、発酵を直訳したFermentationは、アルコール発酵に関する言葉です。
乳酸発酵や酢酸発酵などのアルコールを発生させない発酵は語源から考えると含まれていないことになります。

発酵は中国語で「发酵」

今度は中国語で考えてみます。
発酵を中国語に直訳すると、『发酵』です。

发酵は、日本語で発酵の他に、長期保存のために『寝かせる』という意味があります。
これは、日本の発酵食品にかなり近しい意味です。

日本の発酵文化の発端は、中国とも言われているため、中国の发酵に近いニュアンスになっています。
縄文時代に、中国から『醤(ひしお、ジャン)』が伝わり、醤を元に味噌や醤油が作られています。

そのため、発酵を直訳した发酵は、日本の漬物のような寝かせて作る乳酸発酵などのニュアンスも含まれています。

日本の独自の発酵文化

縄文時代に中国から日本に伝わった発酵文化は、長い年月をかけて日本の独自の文化へと醸成されました。

日本に存在するニホンコウジカビを使った日本酒・醤油・味噌が作られるようになり、
室町時代には、かつおを使ったかつお節が作られるようになり、
江戸時代には、米を精製した時に出てくる米ぬかを使ったぬか漬けが作られるようになっています。

このようにして、日本の発酵文化は世界で注目されている日本食の基盤となっています。